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.政治  投稿日:2022/8/24

維新代表選【政策・人間力分析】その1 足立康史さん


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・先の参議院選挙では野党の中で最も多く議席を獲得した、日本維新の会の代表選が行われている。立候補者の足立康史さんの政策について分析する。

・足立さんは現代を「戦後最大の危機」としており、身を切る政治改革や地方分権などを推し進める「足立プラン」を掲げている。

・インターネットでの発信にも力を入れており、その「突破力」「討論力」に期待が高まる。

 

日本維新の会の代表選が行われている。参議院議員選挙で、野党のなかで最も多くの議席を獲得した維新。比例代表では785万票、得票率14.8%を集めた。今後、維新への期待は大きい。

しかし、10・20代の若者の人気は少なかったり、吉村さんや松井さんのカリスマに依存していたり・・・などと党としての課題もあるようだ。今回、第一回目は立候補者である足立康史さんの政策から見ていきたい。

■ 行動を支える深い問題意識

▲写真 出典:足立康史特設サイト

足立康史さん。大阪府茨木市育ちの56歳。父親はJICAの専門家。茨木市立東中、府立茨木高を経て、京都大学工学部を卒業、同大学院工学研究科修士課程修了。その後、通商産業省に入省し、大臣官房参事官(商務情報政策局担当)、日本貿易振興機構ブリュッセル・センター所長などを歴任した。東日本大震災を機に2011年3月、退官(当時45歳)。みんなの党に入党するものの離党し、日本維新の会の結党に参加。党国会議員団幹事長代理、党国会議員団政務調査会長をつとめる。当選4回、

ネットでの発信活動が熱心であり、その熱心な活動を支えるのは問題意識であろう。現在を「戦後最大の危機」にあるとし、改革を先送りする猶予はないと主張する。

■ 今回の公約、足立プランのリアリズム

「政策通」と呼ばれているほど政策についての幅広い知識や深い視点を持っている。独自のサイトや公約(日本維新の会代表選挙候補者 足立康史 重点公約パンフレット)を作成・発表、youtubeで「足立プラン」を解説するなど精力的に活動している。さらに党の政策である「日本大改革プラン」についても手厳しく、「もっと伝えていくべき」として、より人々に伝えるため改訂すること、新たな旗を掲げようということを主張している。

「維新八策」をブラッシュアップする5つの重点政策アジェンダとして、

1.人口減少社会に適応した最適な「統治機構改革プラン」の策定

2.国家ビジョンたる「税・社会保障・労働市場の三位一体改革」の再構築

3.責任ある原発・エネルギー政策に正面から挑む「グリーン・グロース戦略」の推進

4.国民と領土領空領海を守るタブーなき「安全保障戦略」の構築

5.大国日本の二大政党にふさわしい「政策立案機能(政党シンクタンク)」の強化

を掲げている。

特に、原発・エネルギー政策について、足立さんの「グリーン・グロース戦略」は興味深い。第一に、安全性が確保された原発の再稼働、老朽原発のリプレースを積極的推進するそう。第二に、グローバルな視点や持続性の観点で、排出権取引制度の導入推進、スマートグリッドの推進など「活力ある」グリーン成長を考えている。太陽光パネルなど自然エネルギーについては注文を付ける。「外資の大企業が地域環境破壊が甚だしい」と警鐘を鳴らし、「地域環境との調和」「地域住民の合意」が再生可能エネルギーを進めていくための条件だと言っているところはさすがである。

■ 足立プランの3つの特徴

これらの政策の特徴を見てみよう。第一に、政治改革。身を切る改革の徹底と適正化を掲げ、政治家改革に言及するなど本物感にあふれる。「政治資金パーティーの開催や領収書不要の政策活動費を認めるなど徹底さを欠いている」という問題意識のもと、徹底した 「身を切る改革」を断行すると決意。企業団体献金の抜け穴になっている政治資金パーティー禁止、領収書不要の抜け穴である「政策活動費(組織活動費)」の使途公開で政党幹部による政治資金の私物化を防ぐ、「政治資金私物化防止法案」を復活させるなどかなりの先進的な改革を提起している。

▲写真 出典:日本維新の会代表選挙候補者_足立康史_重点公約パンフレットより

第二に、地方分権について強調し、道州制を主張している。今やだれも言わなくなってしまったが、20年前、地方分権は政治改革業界のホットイッシューだった。それをこのタイミングで明確に主張している。持続的かつ効率的な広域行政システムを憲法改正で導入していくと具体的な進め方まで提示した。東京一極集中についての問題点を認識していたのも印象深い。さすが、みんなの党出身ということもある。

第三に経済政策。税制改革、社会保障制度改革、労働市場改革を三位一体で行う 「日本大改革プラン」を声高らかに掲げたが、選挙では大々的に訴えなかったという反省をまずしている。「社会保障制度、税制、労働市場が壊れているから、(経済)成長しない」という問題意識を持ち、積極的な提案が目立つ。

▲youtubeキャプチャ 出典:【徹底解説!足立プラン⑤】日本維新の会代表選挙 足立康史 公約解説 社会改革

経済成長のための「税の構造改革」が必要だと説く。具体的には「フロー(収入)減税はするが、ストック(資産)増税の話は維新はしないのです」と主張し、巨額の投資をしている投資家については資産課税の必要性があると言及している。

■ 安全保障・外交は?

安全保障の議論こそ、この代表選でやるべきだ!とする足立さん。タブーなき外交安全保障の議論を促している。

・「専守防衛」の定義の内、防衛力に係る「必要最小限」に限るとの 規定を憲法解釈を含めて見直し、自衛権について法律事項で確定

・ポジティブリストからネガティブリスト方式へ転換するなど、 自衛隊法を抜本的に見直し

・中国はじめ力による現状変更を目論む覇権主義国家に対抗す るため、日米同盟を基軸に、クアッドにおける安全保障の枠組 み強化、AUKUSやファイブ・アイズへの参加を進め、英連邦の 国々や台湾はじめ価値観を共有する海洋国家との「海洋国家 ネットワーク」を構築

【出典】日本維新の会代表選挙候補者_足立康史_重点公約パンフレットより

と、かなりタカ派の印象である。発言を見てみよう。防衛費GDP2%以上という数字については、世界の軍事コミュニティ向けの数字であり、世界標準の議論をしてくことが大事だと語る。「千歳の(自衛隊)官舎は古い」という点を紹介し、必要なお金は必要であるとも語る。他の様々な「いらない予算」を集めれば、財源増は可能とも語る。

世界の軍事コミュニティ向けの数字と言うが、各国の防衛費GDP比を見ても、2%を超える必要が本当にあるのかと思ってしまう。ドイツも、カナダも、中国も2%以下である。

▲表 出典:SIPRI Military Expenditure Databaseより

そして、防衛費をいったん増やしたらどうなるか。アメリカでは、2000年から140%も膨張したように、国防予算の削減は常に達成が難しかったのである。多額の政治献金を行っている防衛産業の影響力が増え、国防費が上がり続けてしまったアメリカ。日本にもその可能性がある。軍部の影響力増大、巨大な軍需産業も勝てない第二次大戦に突っ走った原因であることを忘れてはいけないだろう。

そもそも、ウクライナとロシアの間の紛争の発端はクリミア戦争前、2014年のクリミア併合・ドンバス介入にさかのぼる。「ウクライナ侵略を経て私たちは考えを替えなければならない」と言うが、なぜなのだろうか。そして、ウクライナをきっかけに、防衛費増大を訴えはじめることはどうなのだろうか。台湾有事の可能性があるのはわかるが、これまでの日米同盟、在日米軍の存在があって、なぜに今更倍増するのだ?という疑問を感じえない。

■ 突破力・討論力の実績を活かして欲しい

最後に、足立さんは政治家改革として「政治家を身分から職業へ」という理念を掲げていること、そして、政策立案機能向上のシンクタンク設立、秘書などのキャリア育成など、日本政治の問題解決を具体的に提案している。

過去には、熱海市伊豆山の大規模土石流を踏まえた盛り土規制法案に対して「政府案の規制だけでは不十分。土砂のトレーサビリティー(流通履歴)制度と置き場の確保についても措置する必要がある」と強調するなど精力的に活動し盛り土規制法を実現、そのほか、デジタル改革関連法に「公正な給付と負担」を追記することなど実績も多い。

足立さんの「突破力」「討論力」に期待したい。

その2その3その4へつづく。全4回)

トップ写真:演説をする足立康史氏 出典:足立康史代表選挙公約パンフレット




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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