維新代表選【政策・人間力分析】その4 3候補の人間力分析
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・足立康史候補、他者との意見対立を伴う討論もいとわない姿勢。
・馬場伸幸候補、理念型の政治家であり、生活者目線や等身大の姿勢が伺える。
・梅村みずほ候補、「行動力」「突破力」「挑戦する力」に自信があり、「共感」を生むのがうまい。
日本維新の会の代表選挙、今回は人間力分析。自民党総裁選、立憲民主党党首選、総選挙での各党党首の分析(維新は松井さん、吉村さん)に引き続いたシリーズになる。人事コンサルタントという専門家としての観点で、政治家としての能力について考えていきたい。ただし、過去のシリーズと違い候補者に直接会ったこともなく、今回、恒例の「声診断」は行わない。
■ 独特の個性が強い足立さん
▲写真 出典:日本維新の会代表選挙候補者_足立康史_重点公約パンフレット
まずは、足立康史さん。1965年10月14日、大阪府茨木市育ちの56歳。父親は関西電力のダム屋さん。一卵性双生児の兄がいる。茨木市立東中、府立茨木高へ進学。茨木高では、水泳部で水球の選手として活躍。インターハイ・国体に出場。本人は「(水球選手だったことで有名な)歌手の吉川晃司と同期」と言うことを述べていたほど活躍したらしい。進学校でインターハイは凄い、まさに文武両道である。その後、京都大学工学部に進学。土木計画を専門だったとのこと。大学時代も水球に汗を流し、チームの主将を務めたそうだ。リーグで8連覇を達成。卒業後、京都大学大学院工学研究科修士課程に進学し、修了。
卒業後、通商産業省に入省。20年で10局を回る。生活産業局、通商政策局・米州課、大臣官房・企画室、資源エネルギー庁石油代替エネルギー対策課の課長補佐を務めた。コロンビア大学国際関係公共政策大学院へ留学、修士号を取得。ジョブカフェの責任者だったことなどが官僚時代の実績。大臣官房参事官(商務情報政策局担当)、日本貿易振興機構ブリュッセル・センター所長などを歴任した。東日本大震災を機に2011年3月、退官(当時45歳)。みんなの党に入党するものの離党し、1年で渡辺喜美さんと袂を分かち、日本維新の会の結党に参加した。党国会議員団幹事長代理、党国会議員団政務調査会長をつとめる。当選4回。
■ 強力な発信者となった足立さん
能力面を見てみよう。自身も「突破力」「討論力」が強みと言うように、政策知識や経験や頭脳をもとに、能力を発揮してきた。政策通。柳ケ瀬参議院議員がインタビューにて明らかにしたところによると、論理的思考、論理構成力があり、仕事も相当に速いそうだ。
足立さんは、「耳の痛いことを言う」と覚悟を自ら示し、政策についての信念がとても強い。今回、3人の中でも唯一、重点公約パンフレットを作成、さらにyoutubeにて自分の政策について解説している。政策をSNSも駆使して伝えようという点は、国民に対して誠実であるし、政治家としても素晴らしい。討論・対話をしようとする姿勢は今の政治家に欠けているものであり、異色である。他者との意見対立を伴う討論もいとわないという姿勢はなかなか凄いものがある。
ただし、筆者の研究仲間とネット上でバトルをしていたようで、過激な発言をしてしまうのが玉に傷である。橋下徹さんの告知ツイートに、「つまらん」とリツイートしたり、今回の代表選においても「官僚の皆さんは立憲民主党の人たちに苦しめられている」「立憲民主党は過去の教訓から学ばない」という発言をちょいちょい挟んだりしてる。支持者向けリップサービスのように思えることもあるが、代表としてどうなのだろうか。
衆議院議員選挙出馬時の様子はおとなしい感じの姿であり、SNSでの活発な活動で徐々に認知度を高めてきた。最近では一部の人から「維新のトランプ」「維新の狂犬」と批判されているようだが、ネットでの表現は過激化しがちであることも理解してあげたほうがよさそうだ。また、嘘を付けないということで、本音で常に対応しているからなのかもしれない。
一卵性双生児の兄がいて、「漫画タッチのモデル」などと冗談もいうし、親しみやすさを見せる。気さくな感じを地元民には示していて、「心根はすごく優しい方」という評価もある。特技は作詞とのこと。ロマンチックなのかもしれない。
■ まさに「要」の馬場さん
▲写真 出典:馬場伸幸HP
「維新のBB幹事長」と言われる馬場伸幸さんの経歴を見てみよう。
1965年1月27日生まれの57歳。大阪府堺市鳳西町に料理人の父と料理屋経営の母のもと生まれる。3人兄弟の末っ子で、料理人を継いだ兄がいる。堺市立鳳南小学校、浜寺中学校、鳳中学校で学んだ。大阪府立鳳高校に進学。授業に行かず、ラグビー部で活動(フランカー)していたそう。12学部ほど大学受験したが、失敗。若いころから事業をやりたかった、実業家になりたかったそうで、飲食が身近だったこともあり、高校卒業後はオージーロイヤル(現ロイヤルホスト)に就職、3年間働く。調理師免許を持っている。
1986年2月から中山太郎参議院議員の秘書になる。中山太郎さんとは衆議院議員、外務大臣、総理府総務長官、沖縄開発庁長官を務めた自民党の政治家である。1993年の市議会補欠選挙に出馬し当選。当選時に「よし、当選させていただいた以上はとことんやったると思って、かくなるうえは内閣総理大臣を目指してやります」と発言したそう。
堺市議会議員として6期を務める。堺市議会議長や副議長を歴任。2010年に自民党を離党し、大阪維新の会結成に参加した。2012年堺市議を辞任し、第46回衆議院議員総選挙に大阪17区から出馬し、初当選。その後、維新の会の中心人物として活動。当選4回。
■ 8番キャッチャーの「漢」
政治家には「理念」「哲学」「責任」が必要だと語る。第一に、理念。「納税者が納得できる」「再チャレンジができる社会づくり」という理念をもとに、政策が展開している。第二に、哲学。維新スピリッツや行政改革への思いを穏やかな語り口ながら強く主張するなど、理念型の政治家のようでもある。
多くは語らないが、その言葉から生活者目線や等身大の姿勢がうかがえる。ただし、足立さんもいうように、せっかく作った日本大改革プランをしっかりと国民に説明、対話していくことも必要になるだろう。
大事な言葉は「温故知新」、「一歩ずつ一歩ずつ歩んでいくというのが政治家になる前からの生き方」ということで、男気や信義を大事にする政治家と言う感じである。
組織内部でも人気があるようだ。足立さんからは「人間としては馬場さんの方が立派」「情がある」という評価をえており、自他ともに認める恥ずかしがり屋でシャイな性格とのこと。野球でいえば「8番キャッチャー」と自分自身を表すように組織の重鎮であり、大きな役割をはしてきた。チームのために汗をかく、勝利のために仲間のために、というラグビー精神を発揮しているのだろう。
■ いつも笑顔であるが、実は苦労人な梅村みずほさん
▲写真 出典:政治家になる前の梅村さんブログ
梅村みずほさんは1978年9月10日生まれの43歳。愛知県名古屋市生まれ。父は金融機関につとめる転勤族、母は専業主婦の家庭に生まれる。姉がいる。富山県立呉羽高等学校では演劇部にて活動。立命館大学文学部に入学。大学では放送サークルに加入。イベントMCなども務めた。マスコミ就職がかなわず2001年4月、旅行代理店のJTBに入社。2003年から、京都・大阪を中心にMBS・KBS・FM京都などを中心にフリーアナウンサー・タレントとして活動。タレントオフィスともだちに所属し、ラジオ・テレビ・イベント司会などで活動。華のある活動とはいえ、「レギュラーの仕事は週2コマ入る地方局のラジオニュースだけですし、お金もたくさんいただけるわけではありません」という実情だったようだ。
2009年4月よりフリーランスに転向した。2017年春、同じ立場の夢ある女性を応援したいという想いで「働き女性のためのトークスキルラボ」を始動し、話し方教室を運営。京都橘大学非常勤講師、京都府高等学校文化連盟放送専門部講師を務める。「幼少期からコミュニケーション能力を高める教育プログラムを作ろう」という思いを持っていたそう。2019年、参議院議員選挙に大阪府選挙区から立候補して、初当選。今回、党内弱者の若者・女性を代表して出馬した。
いつも笑顔を絶やさず、そこは心がけているそう。「全てが必然である」と受け入れる姿勢を示す。「宗教問題に苦しんだ幼少期、就職超氷河期の苦しみ、ジリ貧のフリーアナウンサー。母としての悩みに直面」などなど、相当の苦労人でもある。
■ 素晴らしい喋りと共感性のある語り、おもろいひと?
喋り方はさすがの専門家である。聞きやすく当意即妙の受け答えなどはさすがである。自身を「いつも走りながら考え、学び、成長する、というタイプの人間」と語っており、明石市長泉氏に評価されるように行動力があるようだ。自身も「突破力」「挑戦する力」に自信があるそうだ。
「梅村みずほの半生」に明らかにしているように、そのオープンさは特徴的である。家族のこと、プライベートのこと、結婚・出産により「産後うつ」のような状態になったことがあること、キャリアロスに陥ったこと、自分への信頼も喪失したことなど、その姿勢は素晴らしいし、そこまでオープンにするのか、と驚いたほど。「共感」を生むのがうまい。
ただし、「維新を維新する」「永田町の時の流れを変えていきたい」といった発言が示すように言葉の専門家の割には、意味が伝わりにくい言葉を使用することがあるのが気になるところ。
お笑い好きで、タラちゃんのものまねが特技というキャラクターはまだ見せられていないが、そういった一面が垣間見れることを今後、期待したい。
■ さあ、新しい維新を
馬場さんが有力視されているが、選挙は何が起きるかはわからない。それぞれの個性がぶつかる代表戦。維新の候補者3人の今後に期待したい。
トップ写真:代表選に出馬した馬場伸幸候補、足立康史候補、梅村みずほ候補 (2022年8月14日、大阪市難波) 出典:日本維新の会公式Youtubeチャンネル
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。