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.国際  投稿日:2018/4/10

金正恩、電撃訪露はあるのか?


宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー2018#15

2018年4月9-15日

【まとめ】

・4月10日に北朝鮮の外相が訪露。

金正恩の電撃訪露の可能性も。

・49日ボルトン国家安全保障担当補佐官始動。11日米韓協議。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttp://japan-indepth.jp/?p=39389でお読みください。】

 

先週は一週間丸々、欧州のリトアニア、ロシア、オランダ出張に充てた。通常なら水曜日の朝番組「グッドモーニング」出演を終えて空港に直行し火曜夜までに帰国するところだ。今回はMCIS(モスクワ国際安全保障会議)の初日が水曜日だったため、水曜朝のテレビと金曜朝のラジオを両方欠席することにしたのだ。

リトアニアについては先週書いた通り。同国の名誉のために付け加えれば、14世紀、この国はバルト海から黒海までの広大な領土に跨る大公国だった。その後スウェーデン、ポーランドに翻弄され、18世紀にはロシア領に。ロシア革命後1918年に独立したが、独ソ不可侵条約でソ連に編入され、独立を回復したのは1991年のことだ。

モスクワではロシア国防省主催の国際安全保障会議に参加した。スピーカー席には中国、インド、ベトナム等の国防相や軍高官が並び、参加者は総勢500人とも喧伝された。だが、実際にはアジア・アフリカからの参加者が多く、欧米の閣僚級参加者は見当たらない。英国での毒殺未遂事件も理由の一つなのだろう。

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▲写真 MCIS(モスクワ国際安全保障会議) 出典 Ministry of Defence of the Russian Federation

その後、オランダに抜けて痛感したのは、西欧から見るロシアと、東欧から見るロシアが微妙に違うことだった。ソ連崩壊後、東欧がNATO・EUの拡大を望んだのに対し、西欧大陸国はいずれもこれに慎重だった。こうした「西側の東進」を強く推進したのは実は英米である。・・・・詳しくは今週木曜日の産経新聞コラムをお読み頂きたい。

 

〇 欧州・ロシア

3月4日の総選挙から一カ月も経つのにイタリアではまだ組閣が完了していない。今週再び大統領が首相候補を指名するため各政党代表と協議を始めるという。第一党になったのは「五つ星運動」だが、どれも「帯に短し、襷に長し」状態のようだ。イタリアだから仕方がないとはいえ、ドイツもそうだったから、最近の欧州はやはり変だ。

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▲写真 イタリアのセルジョ・マッタレッラ大統領 出典 Presidency of the Italian Republic

 

〇 東アジア・大洋州

9-10日にフィリピン大統領がボーアオ・フォーラム参加のため訪中する。同大統領は11日から香港へも行くという。また、10日に北朝鮮の外相が訪露する。金正恩の電撃訪露ということがあるのか。列車で行くには時間が掛かり過ぎるだろう。同じく10日に日本の外相が韓国を訪問する。ここは日本外交も正念場である。

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▲写真 フィリピンのドゥテルテ大統領 出典 フィリピン政府

15日は金日成の誕生日だが、それよりも、11日に開かれる北朝鮮の最高人民会議で外交問題について如何なる議論があるのか、の方に関心がある。同じ11日からは米韓協議があり、更に、15日からは中国外相が訪日する。各国でどの程度準備が進んでいるのか、詳細は良く分からない。

 

〇 中東・アフリカ

サウジの皇太子が3月19日からの長い訪米を終えたが、米国では常にイランに対する懸念を口にしていた。中東でイランとの戦争が起こるのを避けるためにはイランに対する経済制裁や政治的圧力を強めるべきだというのだが、これを如何に解釈すべきか。同皇太子はサウジ改革の星か、それともサウジの終わりの始まりか?

 

〇 南北アメリカ

9日からボルトン国家安全保障担当補佐官が始動する。また、今週にもポンペイオ新国務長官の議会承認の手続きが始まる。一方、貿易面では米中のガチンコが始まった。トランプ氏は「中国は貿易障壁を下げるだろう」「税は相互的になり、知的財産権に関して取引が成立するだろう」とツイートしたが、中国を甘く見過ぎていないか。

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▲写真 ボルトン国家安全保障担当補佐官 出典 Michael Vadon

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▲写真 ポンペイオ新国務長官 出典 Gage Skidmore

 

〇 インド亜大陸

特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

トップ画像:ロシア国防相のセルゲイ・ショイグ氏 MCIS(モスクワ国際安全保障会議)出典 Ministry of Defence of the Russian Federation

 

【訂正】2018年4月12日

本記事(初掲載日2018年4月10日)の本文中、「3月10日に北朝鮮の外相が訪露。」「3月9日ボルトン国家安全保障担当補佐官始動。」とあったのは「4月10日に北朝鮮の外相が訪露。」「4月9日ボルトン国家安全保障担当補佐官始動。」の間違いでした。お詫びして訂正いたします。本文では既に訂正してあります。

 

誤:【まとめ】

・3月10日に北朝鮮の外相が訪露。

・金正恩の電撃訪露の可能性も。

・3月9日ボルトン国家安全保障担当補佐官始動。11日米韓協議。

 

正:【まとめ】

・4月10日に北朝鮮の外相が訪露。

・金正恩の電撃訪露の可能性も。

・4月9日ボルトン国家安全保障担当補佐官始動。11日米韓協議。


この記事を書いた人
宮家邦彦立命館大学 客員教授/外交政策研究所代表

1978年東大法卒、外務省入省。カイロ、バグダッド、ワシントン、北京にて大使館勤務。本省では、外務大臣秘書官、中東第二課長、中東第一課長、日米安保条約課長、中東局参事官などを歴任。

2005年退職。株式会社エー、オー、アイ代表取締役社長に就任。同時にAOI外交政策研究所(現・株式会社外交政策研究所)を設立。

2006年立命館大学客員教授。

2006-2007年安倍内閣「公邸連絡調整官」として首相夫人を補佐。

2009年4月よりキヤノングローバル戦略研究所研究主幹(外交安保)

言語:英語、中国語、アラビア語。

特技:サックス、ベースギター。

趣味:バンド活動。

各種メディアで評論活動。

宮家邦彦

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