[為末大]社会貢献活動とは社会の役に立つ事で、必要とされる状況を作り、自分の存在意義を持とうとすること
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
妻とあるパーティーに出席していて、いろんな話をしていたら急に妻が「存在意義って、必要とされる事によって決まるのよね」と言い出したから、僕も負けじと「花をさされない花瓶は花瓶じゃないんだろうね」と返した。
昔、「ペットを飼う事でなぜ癒されるのか?」ということを考えた事があるのだけれど、それ自体がかわいいという一方で、「自分がいないと生きていけない存在がいる」という事が、生きる理由になるじゃないかと考えた事がある。「何かの為に」があると自分に意味を感じられる。
いわゆる社会貢献と言われる活動をし始めて、最初は「世間の為に」と言っていたけれど、その内に本当は社会の役に立つ事で、必要とされる状況を作る事で、存在意義を持とうとしていたんだとふと気づいた。必要とされるから自信が持てる側面が僕にはある。
引退が近くなり競技場での自分のパワーが失われていくのを感じて、同時にあれほどあった自信も随分無くなっていった。「ああ、人間の自信なんてその程度なんだな」とふと昔自信満々だった自分が愚かしく思えた。花瓶としての役割が終わった後の花瓶。
自分は自分のものだし自分の為に生きていたいと思う気持ちと、他者の役に立ち他者に必要とされる事で存在意義を感じる気持ち。そのバランスをどう取るか。時々僕の一番いい使い方は他人が知っているんじゃないかと全部委ねる時がある。
本当に引いてみれば、全てに意味は無いし、また全てに意味はあるとも言える。立派さや存在意義なんて人間からの目線でしかないのだけれど、それでもそれに翻弄されながら人に求められる自分でいたいとあがく浅はかな自分。
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