[為末大]<ゲームと戦争>筋骨隆々な軍人ではなく、ゲームのエキスパートが遠隔操作で戦争する時代?
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
サンディエゴに住んでいた時に、たまたま友人が、これから軍に入る青年と電車で乗り合わせた。それでいろいろと話を聞いていると、面接のときの質問で「戦争を模したテレビゲームの経験はあるか」と聞かれたそうだ。
軍関連の本を読んでいると、もう無人飛行機やロボット兵士が実用化の段階に入っているらしい。無人飛行機は全体の20%を越えている。面白いのは完全な自動にはなっていなくてやはり人間がある程度コントロールする必要があるらしい。
恐らくはその内、世界中に「ハッカー部隊」や「ゲームのエキスパート」が集められて、遠隔操作で戦争する時代がくるのだろう。そういう時、昔はスカウト先が筋骨隆々の若者だったのが、痩せて眼鏡をかけて眼光鋭いゲームのエリートたちになるのかもしれない。
近代オリンピックの創立者・クーベルタン男爵は、教育熱心で若者育成の目的もあってオリンピックを立ち上げたそうだ。強兵の意味合いをスポーツが担ったという側面も大きい。僕のライバルの旧共産圏の選手達の多くは警察官か軍に所属していた。
僕は冬季五輪にE-sportsを入れたらいいと思っているのだけれど、ある意味で本当の代理戦争化してしまうという事があったりしてと空想が膨らむ。いずれにしてもテクノロジーが進化すると、戦場にしろ言論にしろ現場にいないでも行えるようになるんだと書いてあって、うなってしまった。
軍事戦略の本を読んでいると、何をもって平和と言っていいかだんだんわからなくなる。それでもテクノロジーが進みきって、ロボット同士で戦争が完結するようになれば、少しましな世界が訪れるのかもしれない。
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