[山田厚俊]<藤巻幸夫氏・早すぎる逝去>良いことも悪いこともシミュレーションできる人材の必要性
山田厚俊(ジャーナリスト)
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人懐っこい顔で、腰の低い人。
ぼくが初めて藤巻幸夫氏に会った際の第一印象だ。2010年7月の参院選で「みんなの党」から全国比例で出馬するものの、落選。しかし、12年12月に繰り上げ当選した。昨年12月、「みんなの党」を離党し、江田憲司氏の「結いの党」に参加した藤巻幸夫氏である。
そんなに藤巻氏とは話す機会がなく、2回ほどしか会っていない。最後に言葉を交わしたのは「みんなの党」離党後の会見の場だった。席に着くまでの挨拶がてらに、わずか二言、三言だけだった。そんな関係だったから、政治家としての力量はよく分かっていない。
しかし、ぼくが期待していた政治家の一人だ。伊勢丹のカリスマバイヤーとして知られた藤巻氏は、その後、テレビのコメンテーターなどでも活躍し、広く社会に知られる存在となっていた。流通の現場で、ものづくりの現場を知り、時代を読み解くセンスを持った人間が政治の世界に入ってきたということに凄い魅力を感じていたからだ。
何より、政治の世界で陥りがちなのは、社会の現場と乖離してしまうことだ。一部の業界団体・消費者団体、一部の経営者からの陳情などで「木を見て森を見ず」になるか、霞が関の言い分を鵜呑みにして「森ばかり見て木を見ようとしない」となってしまうことが多々あるからだ。
改革していこうとすることは、全体の仕組みを知り、その際に立ちはだかっている壁を取り除くことだろう。それによって、いいことも悪いこともさまざまなシミュレーションが出来る人こそが、いまの時代は必要なのだ。その決め手の一つが、「現場を知る」「世界の潮流を知る」人間だと思っている。
だからこそ、政治の世界の仕組みを知った後、藤巻氏の活躍の場ができると思っていた。ところが、出血性ショックのため都内の病院で死去した。「結いの党」だけではない、日本政治の大きな痛手だ。享年54歳の若さは残念でならない。合掌。
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