坪30万円以下で家が建った
文谷数重(軍事専門誌ライター)
【まとめ】
・ 坪30万円未満で家は建つ。
・ 真四角、総二階にして壁紙を省略。
・ TVコマーシャルをする住宅メーカーには頼むな。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されず、写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=43025でお読み下さい。】
家を安く建てるにはどうすればよいか?
自宅新築は高い。そう考えられている。建物は2000万円かそれ以上はかかると考えられている。
それは坪単価が高いからだ。普通なら1坪、3.3平方メートルあたりで40万円はかかる。そのため小ぶりな床面積35坪、つまり100平米の家でも1400万円に達する。水道工事や庭まわりを足せばまずは1500万円を超す。
だが、切り詰めれば結構安く作れる。坪単価を30万円以下に抑えれば床面積35坪は1000万円程度に収まる。あるいは1500万円あれば50坪の家は建つ。
具体的にはどうすればよいか?
構造、グレード、発注で節約することだ。簡単にいえば家を真四角に作り、壁紙を貼らず、TVコマーシャルをする会社に頼まない。そうすれば30万程度に収まる。
■ 兵隊生活10年で家が建った
筆者は床面積50坪の家を1300万円で建てた。坪単価は26万円程度である。土地は親がかりで納屋を取り壊して建てたが整地から登記までざっと1300万円だった。
これは工夫の結果だ。
ドケチ建設は仕事で仕込まれている。海自施設幹部といった100人いない専門職だった。だから建築土木設備や届出はことごとく皆承知している。またいやいや建築士の課程にも行かされていた。その仕事中に「自宅は1200万で建つのではないか」と気づいた。職場資料で積算し業者に尋ねるとその程度で収まる目処が立ったのだ。
実際にその額で建った。東京勤務の際に、実家の納戸あとに建てると水道コミで50坪1300万円で済んだ。まずは兵隊生活10年の蓄えで首尾よく家は建った。その工夫について効果小から効果大の順番に並べて構造、仕上げ、発注の3つの順番で簡単に説明する。
■ 構造でケチれ(効果:小)
まずは構造である。プラン・設計のシンプル化に尽きる。それで坪40万から5%くらい、2万は落ちるだろう。
なによりも四角に作ることだ。真四角かつ総二階である。なぜなら外壁長や雨樋などの飾工事、通し柱や窓の数を小さくできるからだ。
これは図で書けばわかりやすい。100平米の平屋を真四角にすれば外壁は40mとなる。通し柱も4本だ。だが凸や凹とデコボコにすると壁の総延長は増えるし窓数も増える。また入隅・出隅の分、高価な通し柱も多くなる。
▲図 出典:著者
各部の寸法は尺貫法にあわせること。材料は尺貫法基準なのでムダがなくなる。逆にメーター・モジュールは駄目だ。例えば廊下幅を1000ミリにすれば材料に半端がでる。910ミリならベニアは1枚で済んだ。それが2枚いる。
屋根は単純な片流れ屋根あるいは切妻屋根とする。これらは単純で安く雨仕舞もよい。逆に見栄えが良い寄棟、陸屋根は高くなる。最後の陸屋根は個人住宅なら間抜けの選択肢といってよい。効果な上に雨漏りの不安が大きく定期的な補修も必要になる。
▲図 出典:著者
また二階に凹んだ形のベランダ/物干し場所も作るべきではない。ベランダは陸屋根と同じで防水や排水加工が必要となり高い。また雨漏りの危険や将来補修も必要になる。それなら外壁で囲んで除湿機をおいて乾燥室にすべきだ。雨が降っても夜でも洗濯物は干せる。
■ 仕上げをケチれ(効果:中)
次は仕上げだ。簡単にいえば見栄えの部分に金をかけるなということだ。それで坪40万から1割、4万は落ちる。
一番ケチっていいのは壁紙だ。「構造材の上に石膏ボードを貼って」と下地から作ると値切っても壁面積で1平米4000円はかかる。壁長1mあたり1万円(片面/天井高2.4m)くらいはかかる。対して構造材のベニアむき出しなら金はかからない。ベニアにワイヤブラシでヤスリをかけて拭き取れば充分だ。
▲写真 床と壁 本棚部分の壁は構造材のベニアそのまま。ビス止めなので取り外し可能。書斎部分(写真)と寝室部分は製材所から買った床板下貼用の杉板「二等」を横張りした。造作材のグレード「特一等・無節」とは異なりタダ同然の価格である。出典:著者
次が天井と床だ。天井板は学校教室のような石膏板ジプトーンか、懐かしの木毛セメントでよい。床も一番安いフローリングにすること。住んで見慣れればどうでも良くなる。
▲写真 照明と天井 階段部分。照明は電球、天井はジプトーン(ビス止め:交換可能)。同様に廊下、書庫、台所、洗濯室、衣類乾燥室はLED電球むき出し。そのかわり廊下・階段幅は1.2mとし、手すりは軍艦式に両側につけた。手すりは両手保持で上り下りできるので足を滑らせても安全。出典:著者
電気関連設備はネットで買う。業者に頼むとそれなりに高い。だが照明機材やエアコン、給湯器本体はネットで買える。完成後にネット最安の設備をとりつければ安く上がる。
注意すべきはシステムキッチンである。これも普及品メーカを選ぶこと。自動車価格帯の高級品も30万の普及品も実用上は差がない。
■ 発注でケチれ(効果:大)
最後が発注だ。一言でいえば「TVコマーシャルをやってる会社はやめろ」だ。それで坪40万から2割、8万は安くなる。
まず、住宅メーカーは絶対避けるべきだ。坪単価で2割は高くなる。TVコマーシャルや営業活動に積極的である。つまりそのコスト分が価格に載せられている。これは搾取といってよい。
ではどうするか?地元の工務店に頼めばよい。2割は安くなる。
品質は大丈夫だろうか?
大丈夫だ。名だたる住宅メーカーにしても品質は上がらない。なにせ営業と発注と設計しかしない。メーカーの職人は基本的には存在しない。実際に作るのは下請けの地元工務店であり近所の職人だ。工務店に頼んでも差はない。
さらに安くするなら直接発注である。建主が個人で設計、土木、大工(建築)、屋根外壁、電気、材料発注をする。なお、工事保険は掛けられるし、品質保障もそれぞれの注文についている。例えば屋根防水なら10年つく。
▲図 出典:著者
筆者は直接発注でやった。整地と簡単な測量を自前でやった。設計も矩計図ほかを書いてから設計事務所に発注した。諸職も近所で頼み、材料発注とプレカットは直に木材市場でやった。
結果、実質では25万以下でできた。
26万との差額は贅沢だ。筆者の体型に合わせ廊下幅ほかを1212ミリピッチとした。書庫合計40畳に耐える基礎や軸組、床組等と強度を贅沢に作った。また断熱材を分厚く窓を高断熱にした。だから26万程度となった。
トップ画像:Matawa Straw Bale Library 家はいくらでも安く作れる。写真は『3匹のこぶた』に出てくる「わらの家」。米国ワシントン州ワタワの図書館。日本の絵本では竪穴式住居のように書かれるが現物はワラのブロックを棒で刺した組積造を土で塗り固めたもの。木軸で作っても坪20万程度で収まるだろう。 出典:Wikimedia; Williamborg(パブリック・ドメイン)
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この記事を書いた人
文谷数重軍事専門誌ライター
1973年埼玉県生まれ 1997年3月早大卒、海自一般幹部候補生として入隊。施設幹部として総監部、施設庁、統幕、C4SC等で周辺対策、NBC防護等に従事。2012年3月早大大学院修了(修士)、同4月退職。 現役当時から同人活動として海事系の評論を行う隅田金属を主催。退職後、軍事専門誌でライターとして活動。特に記事は新中国で評価され、TV等でも取り上げられているが、筆者に直接発注がないのが残念。