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.国際  投稿日:2019/1/18

仏国内でゴーン批判高まる


Ulala(ライター・ブロガー)

フランス Ulala の視点」

 

【まとめ】

・ゴーン氏は富裕税脱税のため、居住地をオランダに移していた。

・かつての富裕税、「税金亡命」産み、経済危機克服に効果無かった。

・フランスの新聞社もゴーン氏の不正を公表し始めた。

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=43747でお読みください。】

 

フランスのブリュノ・ルメール経済・財務相は1月16日、ルノーに対し、会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるカルロス・ゴーン被告の後任を近日中に指名することを要請したと、フランスのテレビLCIにて述べました。

 

ルノーは安定的で、永続的なガバナンスが必要であり、新たな経営トップを選ぶための取締役会を数日中にも行う予定とし、「ゴーン氏は、ルノーのCEOとしては戻ってこないと言うことですか」と言う質問に対して、「新しい経営陣を選ぶと言うことはそういう意味だ。」と答えました。ゴーン被告が勾留され2カ月がたち、長期にわたりトップが不在であることを懸念し、ルノーおよび、従業員のためにも次のステップに進むことを示したのです。

写真)ブリュノ・ル・メール経済・財務大臣

出典)Frickr; EU2017EE Estonian Presidency

 

また、翌日の同局の解説でも述べられていましたが、フランス政府は今後も日産との(ゴーン氏が築いた)アライアンスを継続していきたいと考えていることは確かなようです。

 

フランス政府はこれまで、「推定無罪」の原則からゴーン被告の解任に反対してきていたこともあり、日本では、フランスは日本を非難していると言う論調の報道が多くありましたが、しかしながらフランスに関するそんな報道の影では、ルノーの労働組合からの反発もおきていたのです。

 

最初は、昨年の時点で、オランダの支社からルノーの幹部に情報開示されていない給与が払われている疑惑から始まりました。この件に関しては、フランス政府もルノーに詳細を求める要求をしています。そして、今年に入り、1月10日に新たにフランスの大手新聞リベラシオンにより、ゴーン被告がフランスの富裕税課税を逃れるため、オランダに税務上の居住地を移していたことが問題提起されたのです。オランダに移住して税逃れをしたことは、フランスラジオ・ヨーロッパ1でも、「公共心に欠け、違法性がなくても大問題だ」と指摘されるなど波紋を広げ、ゴーン被告の逮捕直後の昨年11月に、同被告のフランス国内での納税状況に関し「報告すべき特別な点はない」と、ルメール経済・財務相が説明したことについて、「ほんとうに知らなかったのか」それとも「うそをついたのか」と、対応したフランス政府側も批判されることに発展していきます。

 

富裕税と言うのは、2012年にオランド前大統領が、「富裕層から多額の税金を徴収する」として設けた税のことです。当初は個人に対して課税するとしていましたが、その後、憲法裁判所で違憲決定が出て2年で終わることとなり、代わりに企業に税を負担させることになりました。

 

しかし、富裕税が取り入れられた影響で、フォーブスの世界富豪ランキング第7位であるLVMHのCEOベルナール・アルノ―氏がベルギーへの移住を申請したり、フランスの有名俳優のジェラ―ル・ドパルデュー氏が反発してロシアの国籍を取得したり、多くの法人と富裕層の国外への「税金亡命」が相次いだのです。また、結局は富裕税導入で得られると目標としていた徴収金額もほとんど達成できなかった上、フランスの成長率は0%前半にとどまり、失業率も常に10%を超え、経済危機を克服するところか、逆効果な政策に終わりました。

写真)フランソワ・オランド元大統領とバラク・オバマ元大統領

出典)Frickr; Obama White House

 

このため、その当時、オランド大統領の側近だったエマニュエル・マクロン氏は富裕税の無意味さを認識し、自らが大統領になった際、「税金亡命」が起こらないように富裕税を不動産富裕税に転換しつつ、もっと違った方法での徴収を目指しはじめたのです。そういった経緯のもと、「フランスの会社のリーダーはフランスで税金を払わなければならない」とも述べていたのにもかかわらず、なぜ、ルノーのCEOであるゴーン被告が、税法上の居住地をフランスからオランダに移しているのか。ルノーの労働組合から不満の声が高まりました。

写真)安倍首相とエマニュエル・マクロン仏大統領

出典)内閣官房内閣広報室

 

また、1月15日には、日本で、日産の内部調査結果が公開されました。フランス大手新聞レゼコーにも「カルロスゴーンが日産の費用でどのように彼の家族を優遇したか」と言うタイトルで、ゴーン被告の姉に実態のないコンサル契約を元に報酬が支払われていた事実などが詳細に紹介されたのです。記事では、裁判が終わるまで真実かどうかはわからないとしながらも、日産の内部調査の情報はさらに労働組合の不信感をあおる材料になりました。

 

こういった一連の流れを考えれば、フランス政府が16日にゴーン被告の後任を求める発表をしたのは当然のタイミングと言えるでしょう。

 

もちろん、会社のトップであるCEOがすでに2カ月も不在であり、今後も長期化が予想されるとあれば、継続して今までのように雇用を促進していくことも難しくなります。従業員や株主だけではなく、マクロン政権のためにも、次のステップに進んだことは間違いありません。

 

トップ写真)ルノー本社

出典)Tangopaso  

 

 


この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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