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.国際  投稿日:2023/3/1

中国の脅威への対処法 その10(最終回)現実を直視せよ


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・在日中国人の存在が大きくなり続けており、法制による警戒や規制が必要な時期がきた。

・中国の対日姿勢の特徴には、日本と異なる国際秩序を求めている点、反日志向を保持している点などが挙げられる。

・中国という現実を正確に認識することが日本を守ることにつながる。

 

日本にとっての中国という現実が、日本国内でも日に日に巨大となっていることが実感できる。当面はコロナ感染のために中国からの大量の入国者の波は抑えられているが、またすぐに再開されそうな兆しは明確となってきた。

だがコロナ感染の前、そしてそのコロナが一段落した現在、いずれも首都圏での中国人の存在は大きくなり続けている。東京の盛り場、池袋を歩いてもよい。池袋駅至近の甘味店に入ってもよい。中国語の会話があふれている。川ひとつ越えて埼玉県の川口市にいくと中国人の家族の定住が顕著である。

これら在日の中国人は日本の土地を買う、企業を買う、住宅を買う。こうした投資活動が果たして日本の安全保障を損なうことはないのか。

なにしろ農地や水資源、自衛隊基地周辺の不動産までが中国側に買われてしまうのだ。日本の安全保障への影響が考慮されてもよいはずである。

日本における中国人の存在がこれほど大きくなれば、なんらかの法制による警戒や規制が必要な時期がきたと思う。ところが現実にはこの種の切迫した課題が国政の場である国会では、議論されない。そして一般国民の認識につながる主要メディアでも報じられることがほとんどないのだ。

このあたりは日本の官民の意識革命が必要だろう。だがその前にまず現実をみよ、と提唱したい。日本では中国人の存在が着実かつ大幅に広がっているのだ。

中国は日本にとってふつうの国ではない。一党独裁の中国は政府が国民を支配し、海外に出ても中国の国民は中国政府の命令には従わねばならない。

しかも日本の国としてのあり方の基本に敵意や否定の意思を抱いている。この点、アメリカやイギリスの国民の日本在住とは異なるのだ。

日本にとって危険な隣の大国に対してまずそのあるがままの姿を知ることが第一である。この連載記事で何回も述べてきたように、中国の現実を直視することである。その現実認識こそがわが日本を守ることにつながる。

だがこれまでの日本ではその中国のあるがままの姿を知るという作業がまともにはなされてこなかった。逆に中国の現実の姿をみつめ、その特徴を指摘すると、「反中」というようなレッテルを貼られ、封じこめられることが多かったのである。

だがいまやそうした偏見もだいぶ減ってきた。数多くの日本国民が中国の持つ危険性、敵性に気がついてきた結果だろう。

中華人民共和国とは日本にとってどんな国家なのか。日本をどうみているのか。日本との関係をこれからどうしようと意図しているのか。これらの諸点を中心に中国という現実を正確に認識しなければならない。

その現実認識こそが中国の脅威への対処の第一歩であり、究極でもあるといえよう。

では最後に中国の対日姿勢の特徴をまとめてみよう。その特徴を現実として直視せねばならない、という意味をこめて、である。

第1は、中国は日本とは異なる国際秩序を求めている点である。つまり日本の求める国際秩序を否定しているのだ。

第2次世界大戦後のアメリカ主導の国際秩序を日本は尊重し、その一員となってきた。だが中国はいまや明らかにアメリカ主導とは異なる国際秩序の構築を宣言するにいたった。

第2には、中国は日本の国家安全保障の根幹を否定している点である。つまり日本の防衛のあり方を否定しているのだ。

日本は自国の安全保障を日米安全保障条約に基づく日米同盟に委ねている。だが中国はその日米同盟に反対し、米軍のアジア撤退を求める。中国の安保政策は日本の安保政策と正面衝突するのだ。

第3は、中国が日本の民主主義や人権尊重、法の支配に基づく統治を否定している点である。つまり共産主義、社会主義に基づく共産党政権の一党独裁を最善とするのだ。

中国は社会の法の支配や個人の自由などを尊重しない。つまり日本側の普遍的な価値観を否定するのである。

第4には、中国は「抗日」という反日志向を共産党独裁の正統性として保持している点である。中国共産党こそが邪悪な軍国主義の日本を打倒した正義の存在だと宣言する。

中国共産党こそが日本を倒して全人民を解放したと強調し、その邪悪な日本は過去の罪を反省していない、と断じる。自国民には日本の戦時の軍事侵略のみを教え、戦後の平和志向を教えない。

第5には、中国は長期には日本を自国の影響圏内におこうとしている点である。日本固有の領土の尖閣諸島の軍事占領を目指し、沖縄の日本の主権を認めない。

日本に対しては、「小日本」として日本の中国への従属性を一般化する風潮を共産党政権があおってきたのだ。

以上の中国の対日政策の基本は数十年、揺らいでいない。つまりは現実なのである。日本側はまずこの現実を直視して、そのうえで中国への中期、長期にわたる対処の方法を考えるべきだ。

(終わり。その1その2その3その4その5その6その7その8その9 全10回)

トップ写真:旧正月に大阪を観光する多くの中国人観光客(2018/2/18 大阪心斎橋)出典:Photo by Zhizhao Wu/Getty Images




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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