東京アラート レインボーブリッジ赤点灯必要? 東京都長期ビジョンを読み解せすく!その91
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・都知事、東京アラート→レインボーブリッジを赤く点灯させると発表。
・ブリッジは多くの都民に見えず、予報でも警告でもない。
・単なるシンボルのイメージ悪化、防災サイレンの方が効果あり。
小池都知事がぶちあげた「東京アラート」。いったい何なのかが判明した。
5月22日に「ロードマップ」を都知事が発表。ロードマップとは何かを簡単に言うと、政府の緊急事態宣言が解除後、施設の休業要請を緩和していくステップ(0~3まで)のことである。
その過程で、COVIDー19の感染状況を周知するのが「東京アラート」だそうだ。感染状況が指標を超える場合、警報を出すようだ。
■余計なアピール?!
その中で、「レインボーブリッジでライトアップ」という取り組みもするらしい。
・数値が良い傾向⇒7色の虹色に点灯
・指標のうち1つでも基準を超えて悪化⇒「東京アラート」として赤色に点灯
なのだそうだ。正直なところ、レインボーブリッジで赤く示して何の意味があるのだろうか?と思ってしまった。問題は4つ。
第一に、多くの都民にとっては、そもそも見えない。テレビでの放映、もしくは沿岸にすむ都民しか見えない(出歩くべきではないですからね)。見ても何を感じるのだろうか。「東京アラートだ!」とわかったからと言って何を予防すればいいのだろうか。
▲写真)小池都知事 出典:東京都Facebook
第二に、警報という言葉とのかけ離れたイメージである。そもそもアラートとは、英語「alert」を意味している。
【動詞】
①警報を出す.
②警告する,注意する.
【名詞】
警戒態勢、警報
といった意味になる。さらに、日本語では「警報」とは、「重大な災害が起こるおそれのある旨を警告して行う予報であり、注意報とは、災害が起こるおそれのある旨を注意して行う予報」と定義される。今回の作動条件であるが、指標の数値が水準をこえたかどうかで示したもの。いわゆる「結果」。今後の「兆候」ではない。指標が未達成、だから何なのだろう。予報でもないし、警報と言うには不十分なものだ。
第三に、悪い意味でのアピールを東京のシンボル的な施設を使用する必要があるのか。東京のシンボルを使用することで、シンボルのイメージを悪化させる。せっかく本連載で評価した「新型コロナウイルス感染症対策サイト」を活用して、自治体ごとに色付けをするとかのほうが現実的である。
第四に、「警報」なら防災サイレンなどで十分である。今でも各自治体ではアナウンスがある。筆者が住む自治体では午前10時頃にアナウンスが流れている。
■アラートの理由
筆者が類推するに「東京感染症アラート」をベースにしたものだと思う。これは「疑い例の段階で早期に病原体検査を実施することにより、患者の発生を迅速的確に把握することを目的とした、東京都独自の仕組み」である。中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザ(A/H5N1、A/H7N9 のみ)、重症急性呼吸器症候群(SARS)などが対象だが、これを応用したものとみる。
▲参照:東京都HP
これまでの都知事や都庁職員、医療関係者には敬意を感じてきたし、それは今もそうである。しかし、今回のアラートでレインボーブリッジを点灯するのは全く持って意味不明である。本連載で、小池都知事のカタカナ語使用を擁護してきたが、今回はちょっと残念であった。
トップ写真:レインボーブリッジ 出典:Wikimedia Commons; Gussisaurio
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。