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.国際  投稿日:2022/2/27

朝日新聞とヒトラー その7 トランプ支持層をヒトラー支持層に重ねる


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】
・朝日新聞は政治的な主張を広めたいとき、御用達文化人を使って自社よりも激しく発信させる。

・2019年オピニオン欄では、早大教授がトランプ氏を支持するアメリカ国民は非民主的な権威主義者だと断じていた。

・トランプという悪ありき、という大前提の上に組み立てられたプロパガンダ的主張とみなさざるをえない。

 

前回に続いて朝日新聞の御用達文化人によるヒトラー悪用の実例を報告しておこう。朝日の御用達文化人とは、朝日の論調に同調する社外の学者や芸能人、政治活動家などである。

朝日新聞は自分たちの政治的な主張を強く広めたいとき、スピーカーのようにこの種の文化人を使って、往々にして自社よりも激しく、どぎつい形で発信をさせるわけだ。

その際にはヒトラーやナチスがよく悪用される。現代の人間を本来、なんの関係もないヒトラーやナチスに重ねるという悪魔化語法である。

今回、紹介するのは2019年8月22日朝刊の長文の論文記事だった。朝日新聞はトランプ大統領を全面的に攻撃してきたが、この記事はトランプ支持者たちの誹謗だった。オピニオン面の下段、「政治季評」というコラム欄に載った「トランプ氏を支持したのは『違い』を嫌う権威主義者」という見出しの論文である。

筆者は早稲田大学教授の政治学者、豊永郁子氏だった。豊永氏はときおり朝日新聞に登場して、安倍政権を手厳しく叩いてきた実績がある。今回のテーマはトランプ政権とその支持者の批判だった。だからワシントンでトランプ政権やアメリカの政治状況を取材してきた私にとっても関心は高かった。

豊永氏の主張は要するにトランプ大統領を支持する人はナチス・ドイツのファシズムを支持した層と酷似する全体主義者たちだというのだった。記事のその部分は以下のようだった。

 

 《アメリカにおける権威主義の研究は、ファシズムを支持した人々の心理的特徴を捉えようとした、ドイツ出身の社会学者アドルノらの1950年の著書を嚆矢とする。90年代に政治学者の間でリバイバルがあり、研究の蓄積が進んだ。そしてトランプ氏が共和党の大統領候補に選出された予備選挙の段階で、ある大学院生が発見する。『権威主義者たちがトランプを支持している!』》

 

同論文では「権威主義者」という言葉がキ―だった。権威主義者Authoritarian とは文字通り権威主義Authoritarianism を信じる人を指す。権威主義というのは全体主義という意味でもあり、要するに非民主的な独裁主義をも指している。つまりはファシズムである。

ヒトラーを支持したドイツ人はみなこの権威主義、つまりファシズムを好んだ、というわけだ。それからおよそ80年後、現代のアメリカでトランプ大統領を支持したアメリカ人有権者たちもそのドイツ人たちと同じようにヒトラーふうの権威主義支持者だというのである。


写真)アリゾナの集会に参加したトランプ支持者達 アリゾナ州フローレンス 2022年1月15日
出典)Photo by Mario Tama/Getty Images

豊永氏はいまのアメリカの権威主義についてはさらに次のように書いていた。

 

 《権威主義者は『一つであること、同じであること』を求める。『違い』を嫌い、多様性が苦手だ。強制的手段を用いてでも規律を全体に行き渡らせてくれる強いリーダーを好む》

 

要するにトランプ支持者というのは多様や違いを許さない独裁態勢を好む人たちだと決めつけているのだった。ファシズムと似た態勢を求める人たちだと解釈するしかあるまい。だからトランプ大統領をヒトラーと同様の残酷な独裁者といいたかったのだろう。言外のそのメッセージは明白である。

そんな人物を支持するアメリカ国民は非民主的な権威主義者だと断じているのだった。いまのアメリカは民主主義を否定する国家であり、無知で危険な国民の集まりなのだという断定に近いともいえよう。
だがその「断定」の根拠がいかにもお粗末だった。その部分を再度、引用しておこう。

 

《そしてトランプ氏が共和党の大統領候補に選出された予備選挙の段階で、ある大学院生が発見する。『権威主義者たちがトランプを支持している!』

 

その「例証」らしき記述は「ある大学院生が発見する」という叫び声の紹介だけなのだ。どこのだれともわからない。どんな場所で、いつそんな発言や発見がなされたのかも示されない。

なんと粗雑な「論文」だろう。朝日新聞記者が自分たちでこれを書かず、外部の朝日文化人に依存したこともなんとなく理解できるようだ。
トランプという悪ありき、という大前提の上に組み立てられたプロパガンダ的主張とみなさざるをえない。朝日新聞のゆがんだヒトラー悪用のトランプ像だともいえよう。少なくとも私が現地でみてきたここ5年ほどのアメリカの実態とはあまりに異なっていた。

(最終回につづく。その1その2その3その4その5その6。全8回)

トップ写真)「セーブアメリカ」集会で講演するトランプ元大統領 2022年1月29日 テキサス州コンロー
出典)Photo by Brandon Bell/Getty Images  




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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