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.政治  投稿日:2024/12/24

問われる再開発ラッシュとPFOS問題への対応【2025年を占う!】都政


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・都政はDXの進展とともに、都市開発やPFOSPFOA問題に直面している。

・都議選で石丸新党と、どう対峙していくのか注目。

・政治活動や国政の影響で混沌とした年になることが予想される。

 2025年を占う、東京都政。国政が混沌としているし、参議院議員選挙もある。東京都もそれ相応の影響を受けるだろう。特に、東京都議会議員選挙では、政治活動の変化の影響を受けるだろう。それはSNSの影響、そして政策議論が活発化していることだ。

 他方、東京都の行政は、DXが一層進んでいて職員がDXを使ってアプリ開発などを進めていて、成果も見えてきそうだ。都知事選に出馬した安野貴博さんもAIアドバイザーに就任した。しかし、都市開発がとめどもなく進み、PFOS・PFOAの問題もくすぶる。東京のリスクは顕在化しているのだが、先送りされている。真正面から本気で問題に向き合い、本格的な都政改革で国政にまで影響を与えるようなことが起きそうもない。混沌とした1年になるだろう。

小池都政の政治的センス

 安野貴博さんが、都の外郭団体でこれまでDXを推進してきたGovTech東京のアドバイザーに就任した。政治的にはいろいろとその意図が言われてはいるが、小池さんの政治的センスの凄いところである。良いものは取り入れて実績を重ねる。政治的な党派対立・利害対立・感情対立とかよりも、融和して取り込む。さすがの一言である。今井尚哉元首相補佐官も巻き込むなど、実力者やキーパーソンを取り込み、使う、さすがのリーダーシップと言える。

 小池さんは、最近人気急上昇の国民民主党とは仲が良いため、都政でも何か「減税」を打ち出すかもしれない。特に、結成が噂される石丸伸二氏(筆者記事参考)「石丸新党」とどう対峙するのか、注目すべきであろう。政権与党の都議会自民党は裏金問題が発覚して弱体化しているし、都民ファースト議員たちもどうなるのかわからない。もちろん、参議院議員選挙もあるため、国政の影響を受け、政治が不安定になるのは仕方ない。

【問題1】都市開発はますますとめどなく進む・・・

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写真)国立競技場から六本木方面を眺める

筆者撮影)

 再開発ラッシュはますます進むだろう。筆者は30年ほど前からタワマン規制を主張しているが、その動きは止まらない。政治行政経済情報の機能が過剰に集中。「主要都市圏のGDPが各国全体のGDPに占める割合:33.1%、通信放送業企業はほぼ東京、100人以上の事業所の所在地(東京圏)は46.9%、フォーチュングローバル500都市別グローバル企業本社所在数占有率(東京都)は73.1%、資本金 100億円以上企業数比率は50.8%」といった状況だ。スイス再保険が「世界1危険」と評価する東京の再開発をますます進めてどうするのか、とういうことだ。

 実際、「国家戦略特区」として都市計画法等の特例など51もの都市再生プロジェクトが進められている。例えば、東京駅前の大規模地下バスターミナル、虎ノ門、泉岳寺、大手町、六本木などなど整備される。さらには、基本的に地方自治体は、再開発ラッシュに積極的だ。凄いお金が「都市再生」のもとに、投入されている。東京の過度の集中を止めようと筆者が過去記事にて、東京一極集中問題解決のプランを以下の図のようなことを示した。石破政権で実行されるかはわからない。利害関係者が多すぎて、この再開発ラッシュを抑制するのは政治の力でも難儀だ。

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【出典】筆者過去記事

【問題2】PFOSPFOA

 発がん性が疑われる有機フッ素化合物PFOS」、「PFOAによって飲み水が汚染されていることが全国的に問題になっている。PFOSはペルフルオロオクタンスルホン酸(Per Fluoro Octane Sulfonicacid)の略称、PFOAは、ペルフルオロオクタン酸(Per Fluoro Octanoic Acid)の略称である。テフロン加工という言葉を聞いたことがあると思うが、このお陰で、フライパンでこびりついても直ぐ洗えるようになる。焦げ付き防止加工のフライパンやハンバーガーなどの包装紙、化粧品、レインコート、カーペットなど、様々な生活用品に含まれていて、水も油もはじく便利な物質である。我々の消費生活を支えてくれたと言ってもいい。

 しかし、健康上の影響で、PFOSとPFOAの製造・使用・輸入が国際条約で禁止され、日本でもすでにPFOS、PFOAは、特定の用途を除き製造・輸入・使用等が禁止された。2020年には、厚生労働省が水道水の暫定目標値として、PFOS・PFOAの合計値50ng/L以下と設定。東京都は2019年の段階で、多摩地区にある3つの浄水場で東京都は地下水源からの取水を止めた。しかし、多摩地区では地下水の汚染が広がっている。その原因とされる米軍基地での消火用泡の使用について、最近、米軍基地に行政関係者がやっと調査を行った。

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【出典】NHK「PFAS汚染”全国マップ(河川・地下水等 令和4年度)」

 赤い網掛け(暫定目標値50以上)が国分寺崖線上に、西南方向に広がる。米軍基地以外にも、フッ素化合物を使用した工場、産業廃棄物処理場のあたりの調査が必要だろう。これは大問題に確実になる。

小池都知事のリーダーシップに期待:伝説の都知事への道

 「東京1人勝ち」、最近活況のデータセンターですら東京に近いことが検討要因として重要だそうだ。「東京だけがよい」という首都だからこその考えは「自分だけがよければいい」という戦後教育のマイナス面も感じられるが、そろそろ見直さないといけない。このままだとOECDでも中位国の日本自体が沈んでしまう。その豊富な税収をしょうもない事業に費やすより、問題解決に集中させてほしい。東京のリーダーシップの可能性に期待したい。

写真)東京都知事選挙にて再選した小池百合子東京都知事(2024年7月7日 日本・東京)

出典)Tomohiro Ohsumi/Getty Images



 

 




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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